場所は福島ではない。山梨の増富ラジウム温泉である。
世界でも有数のラジウム温泉ということで、指揮講習会の会場に近かったこともあり
私が是非にと頼んで寄ってもらった。私はオーストリアのバードガスタイン温泉にも過去数回行っているが、バードガスタインのラジウム温泉は日本のような温泉ではなく、トロッコ列車で坑道の奥にある高温の鉱床に行ってそのサウナのような洞窟に1時間ほど横たわりラドンを吸入する方式となっている(従って入浴はせず、後でシャワーで汗を流す程度)。
バードガスタインのラドンの量は1㎡あたり166500ベクレル(以下Bq)で増富温泉と単純に比較はできないが、増富ラジウム温泉の説明には「ラジウム含有量が非常に多いことで知られる。1リットル中の含有量は12,300マッヘとの記録もある」とあり1マッヘ≒約13.5Bqとのことなので1リットルあたり166050Bqとなる。
これは温泉の建物入り口付近の湧出口、 2.9μSv/hある。同じ日のさいたま市の放射線値0.048μSv/hの60倍以上である。
ちなみに機器はGC-SJ1を使用。
0.1μSv/h以下は測定できないので、ウィーンでもさいたまでも空間線量は計測すると常に0.1μSv/hの表示であった。
温泉に向かい、サーベイメーターのスイッチを入れっぱなしにして宿の方の説明通り温度の高い浴槽と、温度の低いラジウム泉に繰り返し入浴した。はじめに温度の高い浴槽で充分暖まってからかなりぬるいラジウム泉に入り、これを10分ずつくらい3回繰り返して、最後にまた暖かい浴槽で暖まって外に出る。飲泉もしたがはっきり言ってかなりまずい。鉄さびの味がして、少々胸が焼ける。「あんまり飲むと下痢をします」と言うことなので飲泉は100ccくらいにとどめておいた。それでももしデータ通りなら16605Bqの内部被曝である。もちろん、ラドンは数時間で体外に排出されてしまうと言うことだが。
脱衣所で着替えているとサーベイメーターが鳴り出した。見てみると64分で373.6μSvの表示になっている。1時間だと359μSv/h位である。3時間いれば1mSvの被曝。これは脱衣所の数値で、核種がラドン(Rn222) と考えられるので密閉された浴室内の湧出口付近の線量はもっと高い物と推定されるが、他の入浴客に配慮して測定は断念。
さて、私は何故わざわざこんな酔狂なことをしていると思われるかも知れない。私は原発賛成派でも推進派でもない。また、ウィキペディアによると「2005年6月、世界保健機関 (WHO) は、放射性のラドンががんの重要な原因であることを警告した」とある。また「WHO によれば、ラドンガスは空気中でラドン壊変生成物をつくり、これが呼吸気道に沈着し、放出するアルファ線により DNA に傷を付け肺がんを引き起こすとされる。屋外のラドンレベルは通常は非常に低く、屋内ではラドン濃度は高く、鉱山・洞窟や水取り扱い施設または住宅などでは高くなることがある」「アメリカ政府も WHO に準じている。ラドンの安全基準となる量については、いまだ解明されていないといわれる。アメリカの環境保護庁 (EPA) の見解によると、ラドンに安全量はなく、少しの被曝でも癌になる危険性をもたらすものとされ、米国科学アカデミーは毎年15,000から22,000人のアメリカ人が屋内のラドンに起因する肺癌によって命を落としていると推定している」との記載もある。事実なら飲泉どころか近付くのも危険である。
実は3月11日の原発事故の後、私は娘を連れて逃げるかどうか真剣に配慮した。翌週にはヨーロッパ各地から電話やメールで「金を送るからすぐに脱出した方がよい」「うちに住んでかまわないから避難するように」と沢山の友達が連絡してきた。もちろん、ほぼニュースは付けっぱなしだったし、インターネット上で収集できる情報は日本語、英語、ドイツ語の物は可能な限り収集し同じような記事でも他言語でも内容を確認した。原発の状況だけでなく、放射線や放射能に関する情報も読みまくった。3月15日、16日は念のため娘に保育園を休ませ、屋内に閉じこもった(目張りはしなかった)。しかし、最終的に「避難の必要はない。通常の生活を送ればよい」という結論に至ったのは今回サーベイメーターを貸してくれた指揮の生徒が、ドイツのバーデン・バーデンで撮影したこの画像である。
これは湧出口付近などではなく、温泉の建物近くの線量だが7.9μSv/hある。建物の中はもっと高いはずである。
もし、WHOやEPAの見解が事実ならバーデン・バーデンやバードガスタインの温泉施設の従業員、繰り返し滞在して、飲泉したりしている湯治客、付近の住民には有意に肺がんなどの増加が見られるはずである。しかし実際にはそのようなことはない。
実のところ、私はホルミシス効果にも懐疑的である。それほど効果があるならもっとはっきりとした統計学的エビデンスが出るはずである。しかし、逆の証拠もないのだ。WHOやEPAもさることながらドイツ放射線防護協会などという民間機関が食品中の摂取基準を「乳幼児~青少年まで4Bq/kg、成人で8Bq/kg以下とするべき」などと公表していることが知られている。もしその通りなら少なくとも(飲泉だけで)2000倍ほど被曝したことになる。
初めてバーデン・バーデンに行ったのは15年も前だし、それ以来何度も行って合計1ヶ月は滞在しているし行くたびに飲泉もしている(ここの水はまずくないので、かなり沢山飲む)。バードガスタインは飲泉はしないが何度か行っている。ついでに言うと私は86年のチェルノビルの事故の時ウィーンにいて、何も知らされずに1週間過ごしていた。雨も浴びた。
私は「福島で被曝したから癌になる、白血病になる、必ず早死にする、すぐに避難しなくてはいけない」と煽っている一部のマスコミやタレントには非常に不快感を感じている。確かに原発事故は怪しからんし、事故の間接的な原因を作ったのは原発を推進し、安全神話を構築してきた自民党だ。しかし、低線量での健康被害にはまだ確たる証拠は(これも遺憾なことではあるが)ない。確実なのは「癌になるかも知れない、白血病になるかも知れない」と言った不確実な情報がただでさえ避難を強いられている大変多くの人たちの高血圧や心筋梗塞、脳卒中のリスクを著しく押し上げていること、多くの子供達が不安におびえていること、不必要な中絶を考えた人たちが沢山いるという事だ。
世界でも有数のラジウム温泉ということで、指揮講習会の会場に近かったこともあり
私が是非にと頼んで寄ってもらった。私はオーストリアのバードガスタイン温泉にも過去数回行っているが、バードガスタインのラジウム温泉は日本のような温泉ではなく、トロッコ列車で坑道の奥にある高温の鉱床に行ってそのサウナのような洞窟に1時間ほど横たわりラドンを吸入する方式となっている(従って入浴はせず、後でシャワーで汗を流す程度)。
バードガスタインのラドンの量は1㎡あたり166500ベクレル(以下Bq)で増富温泉と単純に比較はできないが、増富ラジウム温泉の説明には「ラジウム含有量が非常に多いことで知られる。1リットル中の含有量は12,300マッヘとの記録もある」とあり1マッヘ≒約13.5Bqとのことなので1リットルあたり166050Bqとなる。
これは温泉の建物入り口付近の湧出口、 2.9μSv/hある。同じ日のさいたま市の放射線値0.048μSv/hの60倍以上である。
ちなみに機器はGC-SJ1を使用。
0.1μSv/h以下は測定できないので、ウィーンでもさいたまでも空間線量は計測すると常に0.1μSv/hの表示であった。
温泉に向かい、サーベイメーターのスイッチを入れっぱなしにして宿の方の説明通り温度の高い浴槽と、温度の低いラジウム泉に繰り返し入浴した。はじめに温度の高い浴槽で充分暖まってからかなりぬるいラジウム泉に入り、これを10分ずつくらい3回繰り返して、最後にまた暖かい浴槽で暖まって外に出る。飲泉もしたがはっきり言ってかなりまずい。鉄さびの味がして、少々胸が焼ける。「あんまり飲むと下痢をします」と言うことなので飲泉は100ccくらいにとどめておいた。それでももしデータ通りなら16605Bqの内部被曝である。もちろん、ラドンは数時間で体外に排出されてしまうと言うことだが。
脱衣所で着替えているとサーベイメーターが鳴り出した。見てみると64分で373.6μSvの表示になっている。1時間だと359μSv/h位である。3時間いれば1mSvの被曝。これは脱衣所の数値で、核種がラドン(Rn222) と考えられるので密閉された浴室内の湧出口付近の線量はもっと高い物と推定されるが、他の入浴客に配慮して測定は断念。
さて、私は何故わざわざこんな酔狂なことをしていると思われるかも知れない。私は原発賛成派でも推進派でもない。また、ウィキペディアによると「2005年6月、世界保健機関 (WHO) は、放射性のラドンががんの重要な原因であることを警告した」とある。また「WHO によれば、ラドンガスは空気中でラドン壊変生成物をつくり、これが呼吸気道に沈着し、放出するアルファ線により DNA に傷を付け肺がんを引き起こすとされる。屋外のラドンレベルは通常は非常に低く、屋内ではラドン濃度は高く、鉱山・洞窟や水取り扱い施設または住宅などでは高くなることがある」「アメリカ政府も WHO に準じている。ラドンの安全基準となる量については、いまだ解明されていないといわれる。アメリカの環境保護庁 (EPA) の見解によると、ラドンに安全量はなく、少しの被曝でも癌になる危険性をもたらすものとされ、米国科学アカデミーは毎年15,000から22,000人のアメリカ人が屋内のラドンに起因する肺癌によって命を落としていると推定している」との記載もある。事実なら飲泉どころか近付くのも危険である。
実は3月11日の原発事故の後、私は娘を連れて逃げるかどうか真剣に配慮した。翌週にはヨーロッパ各地から電話やメールで「金を送るからすぐに脱出した方がよい」「うちに住んでかまわないから避難するように」と沢山の友達が連絡してきた。もちろん、ほぼニュースは付けっぱなしだったし、インターネット上で収集できる情報は日本語、英語、ドイツ語の物は可能な限り収集し同じような記事でも他言語でも内容を確認した。原発の状況だけでなく、放射線や放射能に関する情報も読みまくった。3月15日、16日は念のため娘に保育園を休ませ、屋内に閉じこもった(目張りはしなかった)。しかし、最終的に「避難の必要はない。通常の生活を送ればよい」という結論に至ったのは今回サーベイメーターを貸してくれた指揮の生徒が、ドイツのバーデン・バーデンで撮影したこの画像である。
これは湧出口付近などではなく、温泉の建物近くの線量だが7.9μSv/hある。建物の中はもっと高いはずである。
もし、WHOやEPAの見解が事実ならバーデン・バーデンやバードガスタインの温泉施設の従業員、繰り返し滞在して、飲泉したりしている湯治客、付近の住民には有意に肺がんなどの増加が見られるはずである。しかし実際にはそのようなことはない。
実のところ、私はホルミシス効果にも懐疑的である。それほど効果があるならもっとはっきりとした統計学的エビデンスが出るはずである。しかし、逆の証拠もないのだ。WHOやEPAもさることながらドイツ放射線防護協会などという民間機関が食品中の摂取基準を「乳幼児~青少年まで4Bq/kg、成人で8Bq/kg以下とするべき」などと公表していることが知られている。もしその通りなら少なくとも(飲泉だけで)2000倍ほど被曝したことになる。
初めてバーデン・バーデンに行ったのは15年も前だし、それ以来何度も行って合計1ヶ月は滞在しているし行くたびに飲泉もしている(ここの水はまずくないので、かなり沢山飲む)。バードガスタインは飲泉はしないが何度か行っている。ついでに言うと私は86年のチェルノビルの事故の時ウィーンにいて、何も知らされずに1週間過ごしていた。雨も浴びた。
私は「福島で被曝したから癌になる、白血病になる、必ず早死にする、すぐに避難しなくてはいけない」と煽っている一部のマスコミやタレントには非常に不快感を感じている。確かに原発事故は怪しからんし、事故の間接的な原因を作ったのは原発を推進し、安全神話を構築してきた自民党だ。しかし、低線量での健康被害にはまだ確たる証拠は(これも遺憾なことではあるが)ない。確実なのは「癌になるかも知れない、白血病になるかも知れない」と言った不確実な情報がただでさえ避難を強いられている大変多くの人たちの高血圧や心筋梗塞、脳卒中のリスクを著しく押し上げていること、多くの子供達が不安におびえていること、不必要な中絶を考えた人たちが沢山いるという事だ。
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