2011年12月11日日曜日

専門的に指揮の勉強をしたい若者はいませんか?

ベンジャミンは現在19歳。初めて私の講習会に指揮を習いに来たのは17歳の時だった。ウィーン少年合唱団でソリストを務め、ウィーン国立歌劇場やザルツブルク音楽祭での「魔笛」などにも何度も出演した天才少年だが変声期を迎えて以来スランプに落ち込んで目標を失いかけていた。しかし、今は個人レッスンに通ってオーストリアの音大受験を目指している。だが、彼のように10代で専門的に指揮を学んでみようと思う日本人は数少ない。

音楽の世界では早期教育が当たり前で、ピアノやヴァイオリンなら小学校入学前には始めないとプロには成れない、と思い込まれている(実際はそんな事もないが、何らかの楽器、または音楽自体に対する興味を10代前半までに持たなかった場合はうまく行っても愛好者の域は出ない場合が多い)。
しかし、指揮を志す人の場合20代後半くらいで専門的に勉強しようと決意する人が多い。もちろんほとんどの人はすでに器楽や声楽で音大を卒業していたり、長年学生オーケストラ、アマチュアオーケストラの指揮を経験するなどしているが、指揮も器楽や声楽と同じく、知識を要求される場合もあれば技術を要求される場合もある。指揮者に要求される知識はその基礎となる音楽理論や作曲家に関する様々な知識、歴史や美術、文学、美学、哲学、記号論、建築、宗教に関する知識などがより充実している方が解りやすいので、あまり早くから音楽の知識だけを詰め込めばいいと言う物ではないが、指揮の技術そのものと、指揮を学ぶためにはどのような音楽的技術が必要かと言うことについて言えば、なるべく早く自分の進む道を決めるに越したことはない。それに、もし将来自分の才能の限界にぶつかっても、指揮者というのは非常に潰しの効く能力を持っていなくてはならないので様々な可能性がある。

私が恩師、クルト・レーデル氏と共に指揮者の育成を始めてから15年になるが、その当時ウィーン国立音楽大学の湯浅勇次氏が「俺の門下から必ずコンクール優勝者を出す」と言っておられたので私は「私はコンクール受賞者を出すより受講生にアマチュアオーケストラや学生オーケストラ、中学生のブラスバンドでも安心して納得して演奏できる指揮者になって欲しいです」と言ったら「お前ははじめからそんな事言っているからダメなんだ!」と怒られた。確かに指揮を教え始めてからかつて他の仕事ではあり得なかったほど沢山のお礼状や感謝の言葉を頂くようになった。「今までできなかったことが突然できるようになって目からウロコでした」「生徒達が初めて揃って演奏できるようになりました」「アマチュアオーケストラから常任指揮者になってくれるように依頼されました」「初めてプロのオーケストラを指揮しました」などなどで、私も嬉しい限りである。しかし、5年ほどもすると確かに湯浅氏の門下からは続々とコンクールの優勝者が出始めたのである。
よく勘違いされている方がいるのだが、私は湯浅氏のレッスンを見学させて頂いたことは多いが、自分が湯浅氏に師事したわけではない。あのスパルタ式の厳しく生徒を罵倒するレッスンは私には無理だし、はじめのうちかなり諦めていた部分がある。しかし、今後の目標として私も門下からコンクール受賞者を出したいと思い始めた。
そこで皆さんにお願いだが、もし皆さんの周囲に指揮に興味のある青少年がいたら是非ご紹介頂けないだろうか?条件は音楽に熱意があって、何か一つ続けている楽器(または声楽)があること。

日独楽友協会の指揮講習会は社会人の参加費は12万円、25歳以下の大学生の場合8万円だが、1週間毎日約6時間の講義と実習、後半3日間はオーケストラを使った実習もあるので時間数は音大の専攻生が受ける専攻科目の授業1年分にほぼ匹敵する。私立の音大に行けば1年間で約300万、科目履修生でも数十万の授業料を払わなくてはならない。国立の場合は非常に難しい入学試験があるし、入学の段階で完璧な絶対音感、リズム感、ベートーヴェンのソナタ程度のピアノ演奏能力、無調の初見視唱や書き取りができなければ合格できない。

しかし10代で音感の固まっている学生、特に絶対音感と共に平均律がこびりついている学生にオーケストラの指揮をするための様々な訓練をすることはかえって難しい。そこで講習会に指揮を目指す若者のための特別枠を設けた。受講に当たっては音大の器楽科入試レベルのオーディションがあるが、合格すればオーディション受験料はそのまま受講料に振り替えられ、3万円のみで7日間、オーケストラも指揮して行う指揮講習会が他の受講生と同じように受けられる。

詳しくは日独楽友協会のホームページの案内をご覧頂きたい。
http://www.nichidoku.net/

ゴールデンウィークの家族旅行も良いが、もしかしたら人生を変えるきっかけになるかも知れない指揮講習会を受けてみたい、未来の天才少年は皆さんの周囲にいないだろうか?

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