2012年6月24日日曜日

エストニア・タリンでの指揮マスターコース

タリン室内管弦楽団


今年8月4日から10日まで行われる指揮マスターコースに受講のキャンセルがあったので欠員が2名出ました(レッスン開始は8月5日)すでにいったん締め切ってしまっていましたが、7月20日まで追加の募集を行います。
申込は下記までメールで。

info@nichidoku.net




今年の指揮マスターコースは3年ぶりにエストニアの首都タリンで行います。



世界遺産に指定されたタリン歴史地区


オーケストラはタリン室内管弦楽団です。エストニアは旧ソ連から独立して20年あまりの若い国ですが、フィンランドと近くバルト3国の中でもっとも経済的に安定しています。




前回、2009年のマスターコースの際の映像
メンデルスゾーン 交響曲第4番「イタリア」 
プロコフィエフ 交響曲第1番「古典」

ピアノレッスン 今年は1日だけ行います。

前回、2009年にタリンで行われたマスターコースの際の写真を少しご紹介します。

まず最初にピアノを使って課題曲の準備をします。
主に指揮の難しい部分だけを前もって練習しておきます。

会場の教会、今年は別の会場になります。








練習はエストニア放送局のスタジオ、修了演奏会は市内の教会で行われます。




ピアノコンチェルトも演奏しました。







照明が暗いので譜面灯を付けての練習になりました。 













「のっぽのヘルマン」と呼ばれる塔です。
こんな建物が町中にあります。











マスターコースのプログラムは

ハイドン 交響曲第83番
モーツアルト 交響曲第33番
ベートーヴェン 交響曲第2番第8番、ピアノ協奏曲第2番
シューベルト 交響曲第2番
第5番
などの他、2管編成の作品から選ぶこともできます。
コンクールの準備などのため、ビデオ撮影を行うこともできます。


タリン歴史地区は世界遺産に登録されています。





タリンの旧市庁舎、ラエコヤ広場という大きな広場にあります。
日中はたくさんオープンカフェが出て賑わいます。





ヘルシンキからのフェリー、これは8月の23時頃です。 





















タリンの町は治安も大変良く、夏は日が暮れるのも遅いので安心して過ごせる町です。これは夕方7時頃の写真です。



タリンの港、ヘルシンキ〜タリンは高速船で1時間半ほどです。








英語が大変良く通じます。旅行者には快適な町です。

史上最悪のインフレを起こした国

皆さんどこだか知っていますか?

それは、ハンガリー。

私も1923年のドイツのインフレが最悪と思っていたので知りませんでしたが、

ハンガリーでは第2次世界大戦後16年間で貨幣価値が1垓3000京分の1になりました。垓ってわかりますか?普通10の20乗って書くのでよくわからないんだけど。

1300000000000000000000倍のインフレって言うこと?

東欧、南欧の諸国ではインフレは経済システム自体に組み込まれていて負債などはインフレになることによって何年後かには返せたんです。それが、ユーロ連動になって急に「インフレ率3%以下」なんて決められたら各国とも行き詰まるのが目に見えていますね。

ハンガリーは極右のオルバン政権の元、国粋主義的な政策が進められています。首都ブダペストを見る限り、この1年ほどで多少経済的に立ち直ってきた感じがしますが、憲法も頻繁に改正され、報道の自由など国民の権利が制限されています。

2008年にIMFに支援を仰いだあと、3%以上の成長を表明していましたが、実際には2%そこそこ。それも通貨フォリントをユーロに対して切り下げ、西側からの個人向け借款をフォリントで払うなどかなりの妥協を続けての上です。

これは中央市場の様子ですが、野菜などはかなり豊富にあります。











しかし地下鉄の車輌などはほとんどが旧ソ連製で40年以上前の物がそのまま使われています。西駅の構内にはホームレスも多数います。
多くは年金だけでは家賃も払えないお年寄りです。

2012年6月18日月曜日

スター指揮者によるオーケストラのワールドスタンダード化

今月半ばから今日まで、Musikvereinでバレンボイム、シュターツカペレベルリンがブルックナーの交響曲全曲演奏を行いました。私はバレンボイムは嫌いなので本当は聴きたくなかったのですが、まったく聴かないで批判をするのもいやなので我慢して昨日の8番だけ聴いてきました。やはりひどい物でした。ウィーンに来てブルックナーの交響曲をその間の練習無しで9曲連続で演奏すると言うこと自体、良い度胸ですが、十数年で良くもこのオケの音をこれだけ壊し、まったく恣意的なテンポ設定、バランスも酷い、おまけに指揮の技術自体がなっていないからはじめから最後までオケがずれっぱなし。クーベリックやヨッフム、ヴァントという人たちの素晴らしさが再認識されました。



1980年代まではヨーロッパの各町のオーケストラは専門家でなくてもはっきりと音の違いがわかるくらい強い個性がありましたが、バレンボイムのような指揮者が蔓延して、どのオーケストラにもインターナショナルスタンダードの音色と強力な音量を要求し、オーケストラの個性はすっかり失われてしまいました。さらにカラヤンが自らの解釈を「今後永久に通用するようなスタンダードな」演奏として売り込み、何百万枚ものCDが大量生産されて誰の耳にも強い印象を残してしまったことが、音楽の解釈の面でも均質化を促しました。メータ、アバド、レヴァイン、ムーティと言った人たちはそれに立ち向かえるだけの強力な個性を持ち合わせていなかったし、クレンペラーやワルターのような音楽的な良心も持っていなかった。 東西の壁が崩れてバレンボイムやシノポリのような西側の売れっ子指揮者が音楽監督となった時、ベルリンもドレスデンも大喜びで彼らを迎えました。しかし結果、オーケストラの楽器や音色の違い、演奏の伝統など何も知らないこうした指揮者が伝統あるオーケストラの音色をめちゃめちゃにしてしまいました。同じバレンボイムが音楽監督をしていたパリ管弦楽団は短期間でドイツのオーケストラのスタンダードな音色と同じになってしまいました。例えばバッソンはみなファゴットに持ち替えさせられてしまったり、バッソンを吹いていた奏者は首席を外されました。ベルリンでも同様に昔からのドイツ式のポザウネ奏者はみな脇にどけられアメリカのトロンボーンに置き換えられてしまいました。


昔はどの国もどの町も、地元のオペラハウスが一番贔屓で、丁度スポーツチームと同じように地元のオペラやオーケストラを応援しつつ、叱咤激励した物ですが、今はどこかから呼んできた世界的スターばかりに人が集まるようになってしまいました。しかし、世界中に競争させたところで、演奏家のスタンダードなレベルは向上しても聴衆の鑑賞する力が向上したわけではありません。結局地元バイアスはかからないでも音楽の本質的なところがお座なりにされたままのスタープレイヤーの粗製濫造する演奏に、世界中の聴衆が慣らされてしまったのではないでしょうか?そして、本来演奏家の個性とは相容れない「コンクール」というものを演奏の世界に持ち込んで「どこのコンクールに通った誰だから聴きに行く」という、受け身な姿勢を世界中どこの国でも聴衆が受け入れるようになってしまったことが、クラシック音楽が衰退する第一歩だと思います。