2006年10月15日日曜日

マッケラス指揮のウィーンフィルは全席立ち見!

チャールズ・マッケラス指揮、ウィーンフィルの演奏会をコンツェルトハウス大ホールに聴きに行く。

買ったのは19ユーロの立ち見席だ。

ところでコンツェルトハウス大ホールに立ち見席なんてあったっけ?それにしても立ち見で19ユーロは高いなあ、などと思いながらコンツェルトハウスにつくと、1階中央の座席(2階席がかぶっていない部分すべて)が外して立ち見席になっていた。

ウィーンは長いけれどこんな事は初めて。

私の立っていたあたりの席は普通なら70ユーロはするだろう。

コンツェルトハウスは私営のホールだが最近実験的な企画が沢山ある。しかし、いい場所で安く聞けるなら文句を言う人はないはず。プログラムも立って聴くのが辛いほど長いものはなかった。

マッケラスは以前日本で聴いたはずだが印象は残っていなかった。しかし、なかなか良い指揮者だ。

往年のベームを彷彿とさせるようなぎこちない動きだが、全てきちんと振るあたりが先日のジョージ・プレートルと対照的だ。

最初の曲はドヴォルザークの序曲「自然の王国から」
3部作の1曲だが、盛り上がりに欠けるのであまり演奏されない。やはりエンジンがかかりきっていないようで面白くない。

2曲目はアルフレード・ブレンデルをソリストに迎えて、モーツアルトのハ短調。

ピアノの調整のせいか、私にはやたら打鍵の音がうるさく聞こえる。まるでピアノの鍵盤を叩くのと同じリズムで誰かがタップダンスをしているようだ。

余談だが、私はよく、クラリネットやファゴット、サクソフォンの演奏でもキーのカチャカチャ言う音がうるさすぎて演奏に集中できないことがある。柱時計が静かな部屋でかなり大きな音で時を刻んでいても、しばらくすると聞こえなくなることがあるが、普通は演奏している本人達はキーの音や打鍵の音は気にならないらしい。

演奏は速めで、2楽章はテンポをあまり変えずにメリハリを付けていた。巨匠の技だ。

休憩の後はコダーイの「ガランタ舞曲」とヤナーチェクのシンフォニエッタ。どちらも易しい曲ではない。

指揮は暗譜ではなかったがどちらもテンポが速く、同じようなゼクエンツが沢山続く上にテンポの変わり目も難しいので、曲が頭に入っていなければ楽譜を見ていても指揮はできない。

テンポの変わり目も実に自然に、的確に、音楽的に指揮していた。

あんなおじいちゃんが、なんでこんなにテンポの速い曲をちゃんと振れるのかは謎だ。70過ぎのF1ドライバーみたいだ。

最後のヤナーチェクは何度か聴いた曲だが、感動したのは初めて。特にフィナーレはやかましいだけの演奏が多い中、最後まで緊張感を絶やさないのは見事だ。ヤナーチェクは繰り返しのゼクエンツをどうすれば緊張感を絶やさずに自然なアゴーギクができるかが一番の課題か?

今回、1階のとても前の方でウィーンフィルを見ていて気付いたことがいくつか。

第1に、ボーイングは同じでも、同じセクションで全然違うフィンがリングで弾いている。それで(まあ完璧ではないが)とにかく良く揃って、音が解け合っている。自分の弾き方に各自が自信があるのだろう。前のプルトが移弦しているところを後ろのプルトは同じ弦で弾いたり、次の場所では逆になったりしていた。

第2に、第1ヴァイオリンは表の人が譜めくりをする。楽譜は右から左にめくるから本当は表の人がめくった方が合理的なのだが、日本では階級社会で、表を弾く人の方が偉いことになっているので、譜めくりをするのも書き込みをするのも皆裏の人だ。

誰かを「立てる」など言うことより、合理的で実際演奏上いい結果をもたらす方法を選ぶあたりは、やはり歴史から学んだことだろうか。

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